濡れていく

君は気づかせてくれた。

明日の天気の都合とか、君の心身都合とか、好きなベンチの色とか。

雨の日になると君が泣いているんじゃないかって傘を持って探し回るけれど。

君は確かに中にいるんだけれど、傘に入ってくれても涙で濡れているの。

君は気づかせてくれた。

この世の恵みの仕組みは君に託されていると。

だから君と同じ地球にいて、好きなベンチに座り古代美術に祈りを捧げる。

傘が欲しいなんて、12本の傘を全部あなたにあげてもいいけれど、

最後の1本はあなたと入ってまたベンチを見つけよう。

乾いた心が濡れていく瞬間を手を握って同じ温度で感じていく。

案外湿って無くて、涙の色がベンチについていく。

ゴヤは帰って行った、ラファエイロはお家の中。

そんな事より君のあたしだけの誠実さにずっと同じ温度で溶けていきたい。

でも君が欲しいものは、一応人として扱われる正気と狂気の間。

迷走すればするほど、狂気が見えてベンチが他の色に染まっていく。

でもあたしの変わらない君の狂気を雨で濡れさせたくない。

君は抱きしめた瞬間すべての仕組みがまた清算されていく。

世界で1番、ずっと世界の温度に二人だけで。