墓荒らし


「リクが消えて5年…」
「まだリクの事を探しているの」
「キーはリクの事を知っているだろ」
「知っているよ」
「リクがよくここに来ていた。1ヶ月に2回ここに来て、リクの事を考えるんだ」
ここは墓場。
墓荒らしが来るから、訳の分からない人の墓場を管理しているよ。
墓荒らしはこの時期、心が飛んでいるだろ。
戦争が起きて、お墓は盛り上がっている。
リクを最後に見たのは、ここの墓場にバラを持ってきていたんだ。
ここの墓場にバラを置いていた。
何でリクはそんな事をしていたんだ。
キーが帰って行った。
そうだよ。
僕が墓場でリクを探しているって分かったら皆、近寄らなくなってしまう。
沢山の人がいなくなったよ。
ついでに、ディーの墓場も見とこう。
眼帯していて目を失ったみたい。
気付いたら墓場。
ディーも可哀想。

僕はコレリ。
コレリって名前はコンプレックスだ。
でも、コレリって呼んでくれる人がいるから、それでいい。
リクがいなくなって毎日変わったよ。
毎日に色が無くなったよ。
全部、どうでも良くなったよ。
投げやりになったよ。
嫌いなものも増えたよ。
でも、僕はリクがまだ生きている気がするんだ。
リクをパクって生きているんだ。
リクがしていたファッション。
自分がリクになったつもりでいる。

「コレリ、何処行っていたの?!」
「ただいま」
「抱きしめてあげたい!」
そう言って、ラギが抱きしめてきた。
ラギは愛情表現が激しい。
ずっと、くっついていたいみたいだけれど、自分の時間も大事にしよう。
「コレリ、お願いがあるんだけど…」
「ラギどうしたの?」
「お願いを100個言っていい?」
「せめて20個にして」
「お願いは、ずっと好きでいて」
「いいよ」
「コレリ大好き!」
「ラギ可愛い」


次の日、学校に行って資料を読んだ。
参考書の資料の1200ページ。
やっぱり、ここにリクに似ている事が書いてあるし。
でも、これはリクではない。
この資料、リクの事を言っていない。
リクがいなかった事にされている。
リクは成績優秀で頭脳がズバ抜けて賢くて冷静で分析出来てしっかりしていて。
リクがこの世に必要だ。
キーがきた。
「リクを探しても意味ないわ」
「何で」
「リクは全てを分かっている。だからコレリに近付かない」
「黙れ」
僕は気付いていた。
リクは頭脳がズバ抜けて賢いから、僕を避けてしまうんだろう。

ラギを連れてアクセサリーを探した。
「どのアクセサリーがいい?」
「コレリと同じ色がいい」
「ラギと同じ色にはしないよ」
「形はバラバラでも」
「バラバラって?」
「う、うん、何でもない」
ラギの様子がおかしい。
ラギが戸惑っている。
僕も戸惑っている。
ラギを裏の階段に連れて行った。
ラギの口を手で伏せて
「さっきの言葉はやめておけ」
「cuhiboihfxrugi!!」
ラギが暴れた。
ラギは力が強い。
ラギの腕を掴んで抱きしめた。
ラギは声が大きい。

「この資料。」
また、疑問に思った。
この資料、ラギではない。
誰がこの資料を。

墓場にまた来た。
資料を墓場に置いてみた。
墓荒らしが資料を盗んでしまう。
多分、墓荒らしがこの資料を盗んでしまう。

僕はリクが出てこない事に焦りを感じた。

「ヒューマンツーナイト」
何だ、この広告。
この広告の所に行ってみた。

「コレリの事が好きです」
「げ、誰」
「僕は別に好きな人がいる」
「私はコレリといる」
この広告の所に行ったら、知らない人が迫ってきた。
ダンサーだ。
ダンサー?
「あ、!コレリ!その人誰?!」
ラギに見つかった。
ラギが真顔になって、車に乗って帰って行った。
ラギの初めての表情。
僕は広告にはめられた。
ラギを追っかけた。
ラギはいなかった。

その日、ラギに
「もうコレリと結婚しない。」
「ラギ何で」
「誰とも結婚しない。一緒誰とも結婚しない。」
「バカ」
ラギを抱きしめた。
それでもラギはずっと一緒にいてくれた。
ラギは大きい声で何回も
「コレリと結婚しない」
って言って暴れているよ。
可愛い奴。

何処でも。
何処に行っても。
リクが出てこない。
リクが出てこないって考えているという事は頭でリクが存在しているって事だ。
リクがいない。

墓場にまた来た。
資料がない。
やっぱり墓荒らしが資料を盗んだんだ。
リクも墓荒らしが盗んだんだ。

「僕はラギとずっといる選択肢しかないよ。ラギの資料は墓場まで持っていくよ。ラギの事が大事です。リク、ごめんね。リクの事を忘れてしまいたい。」
墓場にそう言って、花を置いた。
チューリップを置いた。
ナイフも置いた。
リクの事を狂気と思えない。