携帯小説2

前回の続きです。




私はことみ。
今日も仕事終わりに本屋さんに来ている。
沢山の考えを本でごまかそう。
本の最後にある著書さんの経歴を確認する。
私もこういう風な経歴が欲しかったなぁ。
今更だけれど。

ひとしもりきとも少々自分勝手だ。
欲しいものは何が何でも手に入れたいタイプ。
独占欲も強い。
そんな人と付き合って上手くいくのか。

今日はりきとと初デートだ。
茶店で待ち合わせしていた。
ちょっとオシャレをして三つ編みにしてみた。
可愛いって言ってくれるかな。
そう思いながらウキウキして待った。

夜の22:00。
茶店が閉まった。
りきとは来なかった。

今後、もう一生りきとと会えなくなるとは思いもしなかった。

私はお家に帰って三つ編みを解いた。
LINEを見る。
私のメッセージが最後だ。
またメッセージを送ってみた。
「何かあったのかな?落ち着いたら連絡してね」
自分の気持ちを上手く出せない。
本当は顔を真っ赤にしている。
あんなに直球に口説いてくれたのに。
私、ふられちゃったのかなぁ。
そのままiPhoneを閉じ、眠った。

次の日ニュースで知った。
好きな本の著書さんが病気にかかった事を。
私はファンレターを書いて元気付けようかと思ったけれど、気持ちにそんな余裕は無かった。
著書さんが元気になって、また本を出版したら購入してあげる方がファンだと思った。
今は自分の心が落ち着かない。

りきとにLINEした。
「また会おうね」
と。
返事は返って来なかった。

お家に帰り、歯を磨いて寝た。
りきとと出会う前のいつも通りの生活に戻っただけ。
それだけ。

今日は休みの日でひとしと会う日だ。
ひとしが落ち込んでいる私に気付いていた。

ひとしは
「ことみは解離性障害なんだ。いつかそれと向き合わないと人間不信が治らないよ?ちゃんと精神科を受診しよう。プロに見てもらう方がいいよ。僕も付き添いでいくし。」

私は
「過去は思い出したく無い。カウンセリング受けても過去を話して心をえぐられるだけ。忘れる方がいいんだ。」

ひとしは
「そういう向き合い方をしているから、いつまでも同じままなんだよ。僕が付き添うから。」

私は
「ありがとう。でも、もういいんだ。」

ひとしは
「そっか…。まぁせっかくの休みなんだしカフェでも行くか」

そう言ってひとしとカフェに行った。
カフェで角砂糖を眺めていた。


今日は8月2日。
りきとから返事が来なくて3週間。
りきとが亡くなった事を知った。
LINEでりきとの家族と思われる人物から丁寧に亡くなった事を知らせるLINEがきた。

ことみ、私は1人で朝方に海に来た。
りきとの元へ行こうと思う。
私を救えるのはりきとしかいない。
そうして冷たい波があたしの足に触れた。
冷たかった。
私は泣きながら深い波へと向かう事にした。
最後に本屋さんに行って新刊でも確かめれば良かったなぁ。
そう思いながら冷たい波に呑まれていった。
りきととまた会えたなら
「結婚します。」
ってちゃんと目の前で言うんだ。