鬼姫ときょい

私は鬼姫
10年間このお城の姫をしている。
鬼姫と言われるくらい、鬼よりも厳しい。
誰に対しても厳しく当たりが強い。
家来も全員、言う事を聞いてくれるし、私、鬼姫が全部をまとめている。
自分が鬼姫と言われてもいいくらい。

今日もお稽古としきたりの準備。
お稽古は完璧に出来て、迷い無し。
家来に切腹の練習もさせる。
家来に指導も全部、鬼姫がするわ。
全員、言う事を聞いてくれるの。

家来「鬼姫鬼姫は視力が悪いので、失明する恐れがあります。」
鬼姫「それでも私は鬼姫をするわ」
家来「そろそろお休みになって。失明されたら困ります。」
鬼姫「そこまで言うの?」
家来「影武者を作りましょう。鬼姫の影武者を。」
鬼姫「何?!鬼姫は私しかいないのに。切腹されたいの?!」
家来「いえ、鬼姫に休んで欲しいだけです。取りまとめるのも鬼姫なので、鬼姫の影武者がいたら、このお城はまとまるので。その間に鬼姫は休んでいて下さい。」
鬼姫「影武者…」

そうして、影武者を作る事にした。
街中から自分に似ている人を見つけてきた。
影武者「私が鬼姫の影武者になります。完璧にこなします。」
鬼姫「確かに私に似ておる。頑張って。」
家来「鬼姫の言う事を聞くのじゃぞ」

鬼姫の影武者候補は、鬼姫と似ている。
稽古も厳しさもあって、鬼姫の代わりになれそうと噂になった。

鬼姫「影武者、鬼姫のようになれるか?」
影武者「はい、鬼姫様の通りにします。」

この影武者、気に入らない。
何か気に入らない。
消そう。
家来を呼んで、この影武者をコンクリートと一緒に建物に埋めた。
鬼姫は、この影武者が気に入らなかった」
そうして、初めての影武者は消えた。

家来「鬼姫、また鬼姫に似ている子を見つけてきました。」
鬼姫「どのような子だ?」
影武者「鬼姫お願い致します。」
鬼姫切腹してみろ」
影武者「え…」
鬼姫切腹してみろ」
影武者「はい」
そうして次の影武者も消えた。

家来「鬼姫、このままでは失明してしまって、このお城もこの国も終わりになってしまいます。」
鬼姫「新しい影武者を呼んでこい」
家来「はい…」

影武者「鬼姫、きょいと申します。自分は無理矢理ここに連れてこられました。村に返してください。村に好きな人がいます。私は鬼姫になんかなりません。」
鬼姫「コンクリートにされたいのか?」
家来「この影武者の村の好きな人も連れてきました。」
宝「宝と申します。きょいと付き合ってます。きょいは鬼姫にあげません。鬼姫の事は嫌いだ。鬼姫は怖い。きょいと僕を村に返して。」
きょい「宝、ごめんね。私のせいで、こんな所に」
家来「切腹させます?」
鬼姫「様子を見ていいか」
家来「こんな宝ときょいは切腹させましょう」
鬼姫「様子をみよう」

宝、こいつはかっこいい…
かっこいいし、初めて男の人でドキドキした。
でも、こいつはきょいの事が好きなんだ。
どうしよう…
自分も失明してしまう。
目も見えなくなってきている。
影武者を作るしかない。
家来も影武者が必要だと言っている。

鬼姫「きょいと宝をこのお城に置いていていい。鬼姫の影武者の練習をさせるのだ。」
家来「鬼姫…」

そうして、家来から鬼姫になる厳しい指導が始まった。
きょいと宝はお城の常識と教養を教え込まれた。
そのたびに、2人は反抗した。

宝「きょい…きょいの事が好きだから、こんな事が出来るんだ」
きょい「私は村に帰りたい」
鬼姫「何をしておる。稽古をするのじゃ。」
宝「あなたは酷い」
鬼姫「宝、私はあなたの事を」
宝「あっちにいけ鬼め」
家来「そろそろ切腹させましょう」
鬼姫「待て、宝はかっこいい…生かしておれ…」
きょい「…」

私、鬼姫、こんな気持ちになるのは、珍しい。
自分がもし目が見えていたら、宝の顔がもっと見れた。
声だけでドキドキ出来るなんて、自分は本当に鬼姫と名乗れるのかの…
家来「鬼姫、影武者はいらないです。」
鬼姫「急にどうした」
家来「もし、このお城が無くなっても、鬼姫が生きていればいいです。失明しても家来、僕が何処までもついていきます。」
鬼姫「今は宝の事が気になって」
家来「影武者なんて作るんじゃなかった」

鬼姫はきょいを呼び出した。
鬼姫になるかもう一回聞いた。
きょいは断った。
鬼姫はきょいをぶった。

鬼姫は宝を呼び出した。
鬼姫鬼姫、私は宝が好きじゃ」
宝「きょいと付き合っているし、鬼姫は怖い。あなたは嫌だ。どんなにきょいと鬼姫が顔が同じだとしても、性格が全く違う。きょいを選ぶ。」
そう言って逃げていった。


家来「鬼姫、もうすぐお城が燃やされます。どうします?僕は鬼姫に最後までついていきます。どんな手段を使っても。」
鬼姫「私が失明しかけているから、お城全体がまとまってないのだろう。迷惑かけたな。ごめんなさい。家来」
家来「鬼姫のせいでは無いです。敵がもうすぐ来てます。攻めてきます。」
鬼姫「敵が来ておる。もうこのお城もお終いだ。」
家来「どうします?」
鬼姫「最後に宝ときょいをこのお城から逃がそう」
家来「鬼姫の最後になるかもしれない願い。分かりました。」

そうして、鬼姫は見えない目で、こっそり、宝ときょいをお城からの出口を教えてあげた。

鬼姫「宝ときょい、私の分まで幸せに。宝ときょいは村に帰っていいぞ。鬼姫になれなかったね。」
きょい「鬼姫、私と宝はこのお城から逃げます。村に帰ります。今までありがとうございました。」

そう言って、宝ときょいはお城の出口から村に帰って行った。
抱き合いながら。

家来「鬼姫、このお城はもう終わりです。敵に燃やされています。」
鬼姫「最後までこのお城に私はいる。」

お城が燃やさられている中に矢が飛んできて、鬼姫に沢山刺さった。



ここは田舎の村。
きょいと宝は幸せに暮らしている。
宝「色々あったけれど、僕達は田舎の村で幸せに暮らせているね。」
きょい「はい…」
宝「もうお城の事は忘れよう。田舎で頑張って生活していこう。ここにいれば、誰も追ってこないよ。ここで普通に暮らそう」
きょい「はい…」
宝「きょいは可愛いね。これから幸せに暮らしていこうね。」
きょい「はい」

そうして、宝ときょいは幸せに田舎の村で一緒に暮らしたという話しがありました。
今はきょいが鬼姫とも知らずに。