人質1号

私はピザ屋さんで働いている。
本格的なピザで有名。
って言いたいけれど、生地ぐらいしか本格的ではない。
後は冷凍の、のせもの。
それでもお客さんは多い。

一緒に働いているナオキが店長に昇格するんだ。
ナオキは何回も私に告白してきた。
私はモテるから断った。
本当は好きだけれど。

私はユウアって名前。
凄いモテるけれど、本当に好きな人がいるの。
それはナオキ。
断れば断るほど、ナオキは私に夢中になってくれるし。
いつもナオキが将来は私と一緒にお店を出して2人でピザ屋さんを開こうとか言ってくるし。
マルゲリータだけは本格的に作ってよね。

今日もお客さんが多い。
最近、同じお客さんを目にしている。
団体で来てらっしゃるね。
4.5人でよく、ナオキと私を見てくるし。
何か企んでそう。

ナオキに相談した。
「ナオキ、いつもくる団体のお客さんピザを頼まないのに、いつも、ここに来てウロチョロしているよ…」
「ピザ屋さんに来たなら、ピザを頼んで欲しいね」
ナオキは他の事で忙しそうで、よく話しを聞いてくれない。

また、4.5人の団体のお客さんが来た。
今日は話しかけられた。
「お姉さん、一緒に遊ぼうよ」
「ピザ屋さんですよ…」
「じゃあピザを頼むよ。オススメは?」
マルゲリータです」
「今度、頼みに来るね」
そう言って、4.5人の団体のお客さんが帰って行った。

顔も美形だし、いつも仲が良さそう。
悪い人にも見えない。
本当にピザに興味があるのかも。
ピザの腕をあげよう。
そうして、ピザ屋さんとして頑張った。

ナオキに「今日も可愛いね。ユウアは最高だよ。疲れたら休んでね。」
って言われた。
「ナオキといたら疲れるわ。ちょっと、ロッカーでドリンク飲んでくるね」
そう言って、ロッカー室に行った。
リュックから手紙を取り出した。
この手紙をナオキに渡すの。
そうしたらナオキは喜んでくれるから。

急にロッカー室の窓から、いつもの4.5人の団体客が来た。
「お姉さん名前は?」
「ちょっと、ここはピザ屋さんのロッカー室よ。あなた達入ってきては駄目よ。」
リュックを奪われた。
そこに、ピザ屋の名刺を取られて
「ユウアか…嫌、あなたの名前は人質1号だ。」
そう言って、4.5人に囲まれて、目隠しをされて、何処かに連れて行かれた。
その間、気を失っていた。

気付いたら、知らない部屋にいた。
「人質1号、目が覚めた?」
「ここは何処?!」
「僕たちのお家だよ。人質1号の事を気に入っていたんだ。」
「お家に帰してよ」
「もう帰さないよ。ここに永遠にいてね。」
また気を失った。

起きたら、ベッドにいた。
「起きたー?一緒にゲームしようぜ」
「こんな事していいと思っているの?持ち物も全部取って。」
「洋服は着させているだろ。」
「人質1号は、ずっと僕たちのもの」
「そんな事してよくないでしょ」

そうして地獄の日々が始まった。
訳のわからない4.5人と同じ部屋で生活をしている。
この人達は私の事を好きなのは分かった。
でも、お家に帰りたい。

「お家に帰りたいって思っているでしょ?ここが人質1号のお家だよ。」
「帰して…」
「帰ってもつまらない毎日でしょ。ここにいたら僕達がいるよ。」
「皆に会いたい」
「皆に好かれたいとか馬鹿じゃないの。そう思っているから、つまらない毎日を送っているんだよ。」
「…」
ここは地獄だ。

4.5人の仲でも一段と私の事を好きな人がいた。
その私の事を好きな人が、こっそりお家に帰してあげるよって言ってきた。
その人の言う通り、お風呂場の窓から逃げようとした。
そしたら、仲間が来て
「逃げようと思った?お家の中でもGPSで何しようかばれるよ。GPSに居場所と行動がばれているよ。ベッドに戻りなよ。」
そう言って、部屋に返された。
逃げられなかった。

その日から、どうやって、ここから逃げるかを考えた。
部屋にいて、4.5人の団体が常に見張っているから、どうしても逃げられない。
そうして4ヶ月経った。
ナオキは私の事を忘れたのかなぁ。
友達も心配しているだろう。

「おい、人質1号が働いていたピザ屋さんのピザを頼もうぜ。」
誰かがそう言い出した。
「それだけはやめて。心配かけたくない。」
「は?恥ずかしい思いをさせてやる。人質1号が働いていたピザ屋に人質1号が電話してピザを頼め。余計な事は言うなよ。マルゲリータを頼め。人質1号が好きだったナオキと話せるんだから、いいだろう。何か聞かれたら自分はもう大丈夫って言えよ」
「なんて事を…」
自分が働いていたピザ屋さんに電話をかけてピザを頼ませるなんて屈辱!
でも、ピザ屋さんの状況が知りたいし、最後くらい自分のピザ屋さんのマルゲリータを食べたい。
いつか4ぬか分からないしマルゲリータを最後に食べよう。
ピザ屋さんに電話をかけてやるわ。
逆らったら何されるか分からない。
こんな屈辱をさせるなんて初めて。

「人質1号が自分が働いていたピザ屋さんに自分でピザを頼めよ。ほら。余計な事はするなよ。ピザを頼めばいい。それだけだ。ここで食べようぜ。」
「分かった。ピザを頼むわ。」

そうして、この部屋で初めて電話を渡された。
見張りが、ずっと私を見てくる。
ピザを頼むしかない。
普通にいつも通りにピザを頼めばいいだけ。

そうして、電話をかけてピザを頼んだ。
「ピザを頼みたいんですが?はい。マルゲリータです。配達待っています。」
そうして電話をきった。

「余計な事を言わなかったな。ピザを本当に頼んだね。それでいい。」

こんな屈辱は初めて。
最後くらいナオキのお店のピザを頼めて良かった。
この子達はピザが食べたいのね。
ピザの頼み方も分からない知能しかないくせに。
それか今まで私のピザ屋さんのピザを食べた事なかったみたいだし、ピザを買うお金もないのかしら。最近やっとお金が入ったみたいでピザをやっと頼めるって事ね。そして、私の事が好きだから私が働いていたピザ屋さんのピザが一緒に食べたいのね。もう、こいつらの言う事を聞いてていい。


そうして、笑顔の仲、ここの部屋で4.5人でピザを待った。
マルゲリータって美味しいの?」
「美味しいよ」
「本当は食べものでピザを食べるのが初めてなんだ。」
「へぇ…」
「僕達、人質1号を人質にするために、頑張って他国から亡命してきたんだ。」
「へぇ…」
「僕達、人質1号が可愛いって噂を聞いて、ずっと人質1号の事を追ってきた。やっと一緒に暮らせて嬉しいよ。ずっと一緒にいたい。」
「それで平気?人質1号で平気?」
「頑張って、やっと手に入れたんだ。これでいいよ。」
「分かった。私はあなた達にずっと追われるって事ね。逃げられないよ。あなた達に人質にされているし。それで全部いいよ。」

チャイムが鳴った。
ピザ屋さんの配達がきた。

仲間の1人で玄関に向かった。
私は部屋の中で口を縛られた。
見張りも、ずっと見張っていて逃げられない。
マルゲリータがようやく届くんだ。
それしか考えられなかった。

そしたら、警察が来た。
「110にピザ屋さんのピザの配達して下さいって威力業務妨害をしたのは、あなた達?」
「警察がきた?!」

一気に自分はベッドの下に隠された。
これで、やっと解放される。
お家に帰られる。
助かった。
4.5人で慌てて、警察に何か言っていた。

警察が多分勘付いてくれるから、良かった。
多分、あたしは逃げられる。
多分、あたしは助けられるんだ。
いつもの生活に戻るんだ。

警察が怪しんで、お家の中に入ってきた。
ベッドの下で暴れた。
音を聞いて、警察が私の部屋に来た。
「何か音がした。」
そうして、無線で連絡を取っていた。
「(やっと、助かるんだ!!)」
「異常ないです。交番に帰ります。」
そう言って警察は帰って行った。


4.5人の団体が人質1号の所に来て
「僕達だけがいれば、あなたは楽になれるんだよ。全員に好かれようとすると疲れるでしょ。僕達だけに好かれていればいいんだ。」
「ごめんなさい…」
「もう帰る場所はこの部屋しかないんだよ。一緒にいよう。僕達とずっと一緒にいよう。」
「…」

そうして、ずっと4ぬまで、その部屋にいた。
その部屋は賑やかで、1人じゃない気がした。