現役合格

「アリの足をハサミで切るの楽しいなぁ」
僕はそういいながら、アリの巣を眺めている。
どのアリも頑張って巣を作っている。
いっぱいアリが増えるといいね。
ハサミも何個も新しいものを買ってきたよ。
ハサミも沢山集めてしまう。

僕は4浪している。
本当は立命館に行きたかった。
志望校を変えたからだ。
早稲田に現役合格したかった。
立命館が質が高いって噂を聞いたんだ。
その日から立命館を調べるようになった。
訳があって浪人をしている。
本当は簡単に受かるんだ。
受験なんて簡単すぎて僕は何浪でもしてやって、いつか受かって、学者になってやるんだ。
現役合格は…
合格発表の紙がフラッシュバックしてしまう。
いっその事、何浪だってしてやるんだ…
そういいながら、アリの足にハサミを向けた。

浪人仲間の友達に彼女が出来た。
立命館に通っているらしい。
立命館はウェイ系ばかりだね。
僕は好きな人がいるから、別に興味ない。
ディスコードの友達に告白された。
からかっているんだろう。
「からかっているんでしょ?」
って言ったら
「なにそれ…」
って言われて音信不通になった。
僕は人の気持ちが分からない。
立命館に通いたいんだ。
立命館の友達は強くてかっこよかった。
元気すぎて弱くなって消えていったけれど。
色々と知らない方が良かったんだ。
本当は喋り方は全部あなただったんだ。
知らない方が良かった。

憧れってあるんだよね。
犬は海を見て何て思うんだろう。
僕は海を見ても何も思わないんだ。
蜘蛛を見て可愛いって思うけれど。
虫の蜘蛛を可愛がっているの性癖なんだ。

公園で球根を抜いている人がいた。
この人は球根を抜く事が生き甲斐なんだ。
そんな人生でいいね。
頭の中がスッキリしていそう。

世の中で大事なものって名誉ではないの。
哲学者のフレーゲさんはお金だけって言う。
でもね、お金より、好きな人が生きている事が大切って思ってしまう自分が嫌いなんだ。
学歴が高い奴はプライドが高い。
立命館って名前だけだよ。
いくら欲しいものが全部手に入っても好きな人が手に入らなかったら全部意味がないんだ。
何もかも手に入れたとしても、好きな人を手に入れられなかったら生きている価値はないに等しい。
"好きな人"って存在が劣等感の塊になってしまう。
僕は好きな人を一度も手に入れた事がない。
それより勉強していた方がいい。
勉強すればするほど受かる確率が高くなるしね。

立命館の友達はいいね。
強くてかっこいい。
僕も見習いたい。
ハサミを買ってこよう。