交番と虫

「ほー。ここが世界一の凶悪犯がいる地域なんだ!頑張ろう!」
僕は交番に勤務して30年。
数々の事件を取り扱ってきた。
人生の転機。
大事な任務を任された。
それが交番で勤務だ。

「今日は誰がくるかな」
「はりきっていますね」
「それは住みやすい世の中にしたいから」
「そんな簡単なものではないですよ」
「誰かきた!」
「見回りです」
「お疲れ様です」

1日目はこんなもの。

2日目。
誰も来ない。
本当に凶悪犯がいるのかな?

3日目。
誰も来ない。
見回りに行ってこよう。

4日目。
ドアの隙間から虫が入って来た!!
虫が来た!!

5日目。
休み。

そんな感じで毎日過ごしていた。
時々、呼ばれても見回りくらい。

「警察をして30年…平和な時期なんて思えばなかった…」
「警察って死んでも、あっちの世界で警察をやっているんだ…」

近くに公園があった。
虫が沢山いた。
近くに森林も川も雑草も花も木もある。
それは虫が沢山いるわ。

交番にいたら虫がまた入って来た。
虫を手に取り外に逃してあげた。
「自由に過ごせよ」

その日、また虫が入って来た。
「虫も命があるんだから。虫も元気に外で自由に暮らせよ」
そう言って虫を手に取り、逃してあげた。

その日、夢に綺麗な人が出て来た。
「私は虫の生まれ変わりです。あなたに会いたくて、あなたに似合った人間になって、あなたの前に現れました。」
「虫の姿でもいい!」
「命を救ってくれて、ありがとうございます。」
「命を大事にしろよ」

「は?!夢か。。」

夢から覚めて、夢にまで虫が出て来た。

交番にいたら、いつしか虫ばかり探すようになった。
「虫は入ってくるかな。。」
「虫の命も救った方が警察らしいんだ。。」

「見回りです」
「ん!虫が入ってくるから気をつけて!ドアを!」

夏になると虫が増えた。
虫を見ると胸が痛むようになってきた。
「この世が終わっても虫は絶滅しないんだ…」
「自分、何言っているんだろう…」

虫が見たくて、外に出た。
あいつは虫の生まれ変わり?!
嫌、デートしている!
あれは人間だ!

その日、ドアを思いっきり閉めた。

「何で泣いているんです」
「待っていても、僕なんか相手にしてくれるのは、虫だけなんだ」
「そうですね」
「虫がいつも、近寄ってくる。虫ばかり、この交番にくるんだ」

ドアの隙間のせい…?

この世が終わっても虫は生き残ってしまう。
どの世界も。
ミミズだけの惑星もあるんだ。
虫だらけの惑星もあるんだ。
どんなに、世界が終わっても、虫は絶滅しない。
ずっと、虫は生存してしまう。
永遠の命のように。

「僕は何を見ているんだろう…」
「僕はね…全てに気づかないふりをするのが上手いんだ…」

「意識しすぎでばればれですよ!」
「命を物凄く大切にしている者が好きなんだ//」