坊ちゃん。家事代行。


「坊ちゃん何処に行ったの」
「ここにいるの」

坊ちゃんを探している。
坊ちゃんの事を考えていると涙が出てきてしまう。
坊ちゃんの人生は受験勉強をしているだけの人生。
友達もいない人生。
坊ちゃんの理解者は自分だけよ。

「はぁ…いますよ」
「坊ちゃん?!」
「受験勉強をしているんだ。何処か行ってくれ。」
「はい。」

やっぱり坊ちゃんはまだ生きている。

それは坊ちゃんを探しに日曜日の午後、外を歩いてた。
そしたら、坊ちゃんが何処かのウインナーが出てくるようなお店にいたわ。
坊ちゃんに話しかけたら

「僕は誰かといるのはこりごりだ。亡くなった事にしといたよ。」
「まだ生きていたんです…坊ちゃん…」
「あなたがいると受験勉強の事を忘れてしまう」
「それは、自分がいなくなった方がいいです」
「そうだよ。あなたの事ばかり考えている」
「坊ちゃんは嘘つきです…」
「よく分かったじゃん。僕は嘘つきだよ」
「坊ちゃん…」
「僕は受験勉強するから何処かに行って」

そうして、家事代行は大学に向かった。
坊ちゃんが何個か大学の候補を言っていた。

「教授!もっと赤本を難しくしなさい!」
「赤本で受かるとでも?」
「赤本に理系を入れて!」
「急にどうした」
「リスニングも入れる事!」
「どういう事」
「リスニングの会話を赤本に入れるだけでも!」
「そこに理学単語を混ぜろと?」
「リスニングを重視して!」
「何言っているんだ」

その日、大学の赤本の端っこを全部折って帰った。
大学の図書館の本も全部、端っこを折ってやった。

坊ちゃんの欲しいものは。
合格発表の紙。
覚えている。
合格発表の紙を見て泣いていた事を。
坊ちゃんの理解者はあたしだけ。

坊ちゃんのディスコードのアカウントを記憶して。
会話と喋り方も完璧にマスターした。
同じ感じで喋れてしまう。
完コピ出来た。
これで坊ちゃんが遠くに行っても自分が坊ちゃんと同じになれて、一心同体、
あたしが坊ちゃんと同じ声と喋り方でいられてしまう。
性格は坊ちゃんの方が断トツ上よ。
坊ちゃんが世界で1番出来た人物。
坊ちゃんの受験勉強を応援しよう。
頑張っている。

「誰かを範囲に入れたら僕だって記憶が混合してしまう!」
「僕だけにして!」
「僕だって気持ちが不安になってしまう!」
「誰かを入れたらもう記憶が飛んでしまうんだ!」

坊ちゃんが叫んでいた言葉。
大丈夫。
坊ちゃんしか見ていない。
坊ちゃんの事をずっと考えながら生きている。

坊ちゃんと一緒に英語の単語を100回同じのを書いた。
英語の単語を一個書くのも100回は書かないと覚えない。
英語の単語は発音完璧。
紙にいくらでも書けてしまう。

「坊ちゃん…もう亡くなったふりをするのはやめましょう」
「僕は生きていないに等しい」
「坊ちゃん1000000年後も同じ事をしていましょう」
「…」
「生きてないけれど家事代行が生きているふりにお付き合いします」
「…」
「色んな人が離れていくけれど、家事代行だけはあなたの味方です」
「僕もあなたの味方だ」
「ありがとうございます」
「僕の名前を呼び間違えているよ」
「坊ちゃん…」
「勉強しよう」
「分かりました」
「勉強しよう」
「理解されないで生きていくよりも、理解するのは自分自身だけで」
「勉強しよう」
「分かりました」
「僕の側にいるのは家事代行だけで済んでいる。まだいてくれ。」
「感情は常にあなたのものです」
「勉強するんだ」
「常にあなただけのもの」
「勉強しよう」
「勉強です」