タバコとネックレス


大事にしている人がいる。
3ヶ月間一緒に同棲している。
都合の良い奴だ。
3ヶ月目だから倦怠期。
「今月のお金」
「タバコ代これでいい」
「毎月タバコ代と車の費用で20万以上は稼がないと」
「今日は4万渡すから、貯金しといて」
「結婚費用も必要だよ」
「うるさい」
タバコの箱を握り潰した。
タバコのためにホストをやっていて。
こいつと暮らし始めてタバコの本数が増えた。
週刊誌もお家のあちこちに散乱している。
窓もこいつが考えた俺への文字が書いている。
「4んでも一緒だよ」
この文字、意味がわかってしまうと。

俺は結婚の事は考えていない。
ホストをやっていたら、フリーのがモテるんだ。
お客も恋人の座を狙っているから独身のがいい。
独身のが自由だし。
自分が4んだ時に、こいつが誰か色々な奴と協力して生きていけるよう。
いっぱい関わりがあってもいい。
でも、一緒に住んでいるのは俺だけ。
俺だけこいつの主役だ。

俺はレノ。
こいつはミア。
ミアは何を考えているのか直ぐに分かってしまう。
だから、気持ちが揺らいでしまう。
ミア1人を好きでいたいけれど、ミアがいなくなった時にメンタルが…
ミアは愛情表現が異常だ。
一途だから利用しやすい。
「ミア、友達連れてワイン飲むわ。」
「レノ、ワインはそこそこって…」
「止めるの?」
「ワイン飲んでる時が心が浮くんだ」
友達を連れてワインを飲んだ。
ミアの反応を見た。
ミアはうつむいて、料理を作った。
「俺がワイン飲んでいる時は料理?」
「一緒に飲まない」
「何で?」
ミアを後ろから抱きしめた。
「1人でいたいからキッチンにいる」
「後で、2人っきりになろう」

友達を送って、レノとミアは2人っきりでお家にいた。
「レノ、2人っきりがいいの」
「2人っきりの時間多いだろ」
「でも、距離を感じるの…」
「多分、釣り合っていない」
「何処が」
「俺はぐれている。でもミアは周りを気にしている」
「レノの事しか考えていない」
「嘘だ!!今日のお金を破ってみせろ」
「これは結婚費用の貯金よ」
「貯金している時のワクワクだけで生きないで」
「何よ」
「どうせ、結婚したいって願望だけで浮かれていて、現実的に行動しないんだろ」
「一緒にいるじゃない」
「行動ばかりで、言葉がないんだよ!」
「語彙力はレノが持っているから、おとなしくしているの」
「でしゃばれ」
「嫌」
「声も出せない奴が」
「言いたい事はいつか言うわ」
ミアの首を掴んで口を押さえた。
「言わなくてもいい事は沢山あるんだ」
唇を触った。
その日はミアはレノの言う事を聞いた。

ミアがバイトから帰っている時、レノの友達を発見した。
レノの友達がミアのネックレスをしていた。
「そのネックレス、自分のもの」
「レノに貰ったよ」
「泥棒!!」
そのネックレスを奪って、倉庫に置いた。
その倉庫には一生行かなかった。

「レノ、いつもの倉庫にはもう行かないで」
「さっき行ったよ」
「?!」
「週刊誌の間のネックレスだろ」
「ネックレス捨てて」
レノは新しいネックレスをミアの首にして
「何回でもネックレスをあげるから許してよ」
「許さない…」
レノはミアへ何回もネックレスをあげようと誓った。

ミアはレノがめちゃくちゃ好きらしい。
激しいぐらいの愛情表現。
激しいくらいの執着。
激しいぐらいの想い。
激しいくらいの行動。
分からない態度を見せているからだ。
根拠が欲しいんだろ。
事実が欲しいんだろ。

「この貯金箱が貯まったらレノにイヤリングをあげようと思う」
「ミアにもネックレスをあげるよ」
「レノはイヤリングが似合うと思う」
「それが婚約の飾りだ」
「その事実だけでいいよ」

レノ、俺はパーカーを着てタバコを吸っているだけ。
ミアのうるさい姿を見ていると安心してしまう。
ミアは俺の事が大好きって、しっかりと言ってくれて。
一緒に住んでいるんだから大丈夫だって。

「どうみても首ったけだよ」
「顔が赤いじゃない」
「データーとソースが嘘じゃん」
「笑わないで」
「嘘ばかり」
「嘘じゃない」

ミアの唇を手で触って口を閉じさせた。
それでも、ミアはうるさかった。

ミアが抱きついてきて
「気持ちいいだけで終わりでしょ?」
って始めて自分の意思で聞いてきた。
意思を持った。
ずっと生きたいって思った。
めちゃくちゃ好きって何回も行動しているじゃん。