王子様はお姫様の事を。


僕は王子様。
「そこのワイン」
「ワインだけじゃ分からないです」
「そこ」
「何様です」
会話しているのはお姫様。
お姫様はワインを飲めない。
「今日から飲み物は飲まない」
「嘘つき」

僕はドアを開けた。
ドアって何でもいい。
心のドアを誰か壊してって。
そんな事言わないよ。
だって僕にはお姫様がいるし。

お姫様が髪を下ろしてパーカーを着ている。
何でそういう格好。
いつも着ているお洋服はフリフリ系。
今日はパーカーを着ている。
誰かと逢引でも。
僕といる時はオシャレをしている。
誰かといる時はパーカー。
気になってつけてみよう。
お姫様をつけてみる事にした。
僕はコートを着た。
これでばれない。

お姫様が会っている相手は
隣の国の王子様?!
しもべが沢山いる。
僕の家来は50人。
隣の国の王子様はしもべが1000人。
数で叶わない。
お姫様は隣の国の王子様を睨んでいる。
何か嫌な事でも。
会話を聞いた。
近付いて聞いた。

「僕の国の1人にならない?」
「嫌です」
「僕の国は美しいよ」
「嫌です」
「ずっと僕の隣にいてよ」
「物理的に隣の国でしょ」

僕は走ってお姫様の所に行った。
「隣の国の王子様。僕は隣の国の1人です」
「コートを着ている。そのコート。」
お姫様に気づかれていない?!
お姫様は分からない顔をしている。
僕って分かっていない。
お姫様はキョロキョロし始めてビックリしている。
チャンスだ。
「これはこれは隣の国のお姫様。僕は馬の世話人です。」
「馬の国の世話人?」
よっし!お姫様は騙されている。
僕がお姫様の王子様って気づいていない。
「隣の国の王子様は拒否して、僕と一緒に馬を見に行かない?」
「いいです」
いいです?!どっちだ。
強引にお姫様の手を引いて馬の所に連れて行った。

「ここは森林…」
お姫様を森林に連れてきた。
しかも僕って気付いていない。
「お姫様、ここのベンチに座って下さい。このコートをひきます。」
「ありがとうございます」
「お姫様、何故外に」
「言っていいの。隣の国の王子に迫られているの。」
「それはそれは。断って下さい。」
「それが隣の国の王子はあたしが欲しいこの世に一つしかない青のタイルをあげますって。」
「僕が青のタイルをお姫様にあげます」
「ありがとうございます」
「青のタイルをあげるのでそれまでここのベンチで待っていて下さい。目印にパーカーを着ていて下さい。お姫様は美しいから見た目で分かります」
「パーカーを着てベンチで待つ。でも、青のタイルは絶対に頂戴よ」

その日は僕は青のタイルを探しに行った。
隣の国の王子様のお城から青のタイルを盗んだ。
そうしたら隣の国が壊れた。
隣の国がない状態。
この青のタイルはそういう威力を持っているんだ。

ベンチで一年お姫様が来るのを待った。
一年後、お姫様がパーカーでベンチに着た。
「お姫様、青のタイルをあげます」
「ありがとうございます」
「お姫様の嬉しそうな顔、心から嬉しいです」
「笑笑」
「お姫様、笑顔が素敵です」
「青のタイル欲しかった」
「良かった…」
「相談したい事があって」
「何です」
「王子様が好きすぎて気絶しそう」
「王子様って?!」
「あたしの王子様。かっこよくて、たくましくて、引っ張ってくれて、自信がないし、自信過剰だし、性格が素直だし、神経質だし、難しいし、恥ずかしがり屋だし、激しいし、いびきがうるさいし、やっぱり激しいし。そこまで、大好きだと思っている。」
「その王子様の事を好きでいるお姫様の事も王子様は好きだと思われます。」
「秘密よ。嘘。王子様がいたら言っていいです」
「お姫様の事を皆好きですよ」
「うーん」
「どうしました」
「あたしは王子様だけに好かれていればいいの」
「僕もお姫様の事しか目にない」
お姫様の秘密を知ってしまった。
僕の事をめちゃくちゃ好きなんだ。

お姫様が青のタイルを自分の部屋に置き始めた。
僕は心配した。

王子様としてお姫様に会いに行く。
「お姫様、王子が来たよ。」
「好きな人が出来たの」
「僕がいるはずでは」
「嘘。王子様が大好きです」